日本・福岡の建築家
松岡恭子・KyokoMatsuoka
修猷館高校講演会アーカイブ #1
人類と建築とその未来
修猷館高校で松岡恭子氏が語った「人類・建築・未来」

2026年、修猷館高校の第2学年講演会に、同校卒業生であり建築家の松岡恭子氏が登壇した。
講演タイトルは「人類・建築・未来」。
しかし、この日語られた内容は、単なる建築家の仕事紹介ではなかった。
人類が洞窟や森に身を寄せていた時代から、宗教建築、権力の建築、近代建築、戦後復興、少子化、AI、そしてこれからの社会のあり方まで。
松岡氏は「建築」という窓を通して、人間がどのように生き、社会をつくり、未来に向かおうとしているのかを、高校生たちに向けて語った。
母校・修猷館高校で語る意味

松岡氏は、講演の冒頭で修猷館高校での3年間を振り返った。
「私の人生の中で、この修猷館高校で学んだことは、何にも代えがたい経験でした」
松岡氏にとって、修猷館高校は単なる母校ではない。個人の意思や自由を尊重してもらい、友人たちと議論し、学び、考え続けた場所だったという。
普段の講演では、自身の設計作品や活動をスライドで紹介することが多い松岡氏だが、この日はあえてビジュアルを使わず、言葉だけで高校生たちに向き合った。
その理由について、松岡氏はこう語った。
「これから輝かしい人生を歩んでいく若い皆さんに、私が改めて伝えられることは何か。それを自分に問い、皆さんに伝える機会をありがたく頂戴しようと思いました」
建築の始まりは、人間を守ることだった
講演は、建築の起源をたどるところから始まった。
建築の最初の役割は、人間を雨や風、寒さ、そして獣から守ることだった。
石器時代や縄文時代、人は身近にある石、木、土などを使い、原始的な住まいをつくっていた。日干しレンガのような脆い材料も使われていたが、そこにはすでに「人間を守る空間をつくる」という建築の原点があった。
やがて人間は、移動しながら生きる狩猟の時代から、農耕によって定住する時代へと移っていく。
定住は社会を生み、社会は階級を生み、有力者の家や墓、神のための建築を生んでいった。
古墳、ピラミッド、神殿、教会、寺院。
建築は単なる住まいではなく、社会の構造や信仰、権力を映し出すものになっていった。

宗教と権力が建築を大きくした
人類の歴史の中で、建築はしばしば信仰や権力と結びついてきた。
キリスト教、仏教、イスラム教といった宗教が広がる中で、神と向き合うための建築が各地に生まれた。
ヨーロッパのゴシック教会は、天を目指すように高くつくられた。数百年かけてつくられた教会も珍しくない。近代でもサグラダ・ファミリアのように、世代を超えて建設が続けられてきた建築もある。
一方、日本には伊勢神宮の式年遷宮のように、同じ形をつくり替え続けることで技を継承する文化がある。
松岡氏はここで、建築が単に「完成物」ではなく、人間の信仰、技術、時間感覚、継承の仕組みと深く関わってきたことを示した。
「人は時間をかけて、膨大なエネルギーをかけて、建築をつくり続けてきました。それが建築の真髄だと私は信じています」